百四十物語集・弐(再掲)

読み返して思う。雨璃ちん、お馬鹿な子に見えるな。

  • twitterにて制作した140字以内の詩のような短編小説を転記したもの。二集目。
    5月26日/タイトルと一つ改編、4作品追加しました。
    収録作品
    ・春嵐
    春の嵐の都市伝説同好会
    ・namihei
    ・桜は影となり(桜影)
    ・夏の終わりに
    ・悶えろ、若人よ
  • 追加作品
    ・醜と羞
    ・自己の確立
    ・彼は彼女と同じ墓に入る所まで妄想済み
    ・膝枕狂想曲
    (当時のまえがき)

 

 

春嵐
外は春の陽気を見せている。夢の中にいた私は嵐の中を佇んでいた。そんな嵐の中にあの人がいた。嵐の中を走り抜けていこうとしていた。私はその姿を見つめるだけだった。恐れなど無いかのようにあの人は走り続けていた。
「あの人は強いんだね」
もう二度と会えない。人だけど。

春の嵐の都市伝説同好会
(暴風雨の中下校)
綾小路「見て見て、T.〇.Revolutionゴッコ!! 」
繪漣「先輩、化粧が崩れてますよ」
羊「なにやってんだよ。にしても強風に煽られて宇宙人が飛ばされてきたら良いのになぁ(双眼鏡で探索)」
繪漣「来ないから!!ホントもう、コイツら馬鹿だ! 」

namihei
(授業中の大学生男女)
男「なぁ、何やってんの?」
女「見てわかんない? 波平だよ」
男「原材料は…」
女「消しカス」
男「消しカスで波平…」
女「yes,namihei」
(授業後、ネットで)
男『片思い中の彼女が消しカスで波平を作っていました。彼女は僕が嫌いなのでしょうか?』

桜は影となり
今年も桜の花が咲き誇る。その度に俺は桜の名前が付く幼馴染の姿を思い浮かべていた。けど不思議だ。今年は別の女の子の姿が思い浮かぶ。昨年の落葉の中で描いたあの子を今度はこの桜の中で描けたら良いと思っている自分がいる。(続く)

不思議とそこには罪悪感のようなものはなく、どこか高揚感にも似たようなものを感じている。それは桜の所為なのか、それともあの子の所為なのか? 何一つ分からない儘だけど、俺は今携帯電話を手に取り、あの子に電話をかけていた。すぐにでも会いたい自分がいた。(終)

夏の終わりに
ありふれた日常の中に自分はいた。確かにいた。いた筈なのに、この夏が終われば私は居なってしまう。皆のありふれた日常から、当たり前から消える自分。悲しくて、怖い。だけど、誰にも言えなくて。その苦しさから逃げ出すことしか出来なかった。弱い自分を思い知らされた。
※この話はアニメ『夏色キセキ』の転校がきっかけでツンツンというか感じが悪い印象を視聴者に与えた水越紗季ちゃんをイメージして書かかせていただきました。

悶えろ、若人よ
卒業という二文字と戦う日々に嫌気が指すものの、そこから逃げ出すことなど出来ぬ現状に身悶える小生。おぉ、女神よ。早く小生をお救いくださいませ!! この息苦しき世から解き放ってくださいませ!! 女神は微笑んだ。 「断る。しっかり苦しみな」

醜と羞
 暗い夜道を歩けば、昼間の醜態を思い出す。明るい人混みの中を歩けば、全ての人々に軽蔑されている様に感じる。そうした日々の中で生まれ行く羞恥心と共に私は生きている。それはまるで、生者からは程遠い死者の心地の様だった。

自己の確立
 生きた、生きていた、生きている、生きる。それぞれの意味を誰かに問いかけたって無駄だ。それらに正解はなく、宗教家や偉ぶる誰かが説くべき必要性のない問題なのだから。いや、問題ですらない。これは心の在り方、アイデンティティを示すための記号府なのだから。

彼は彼女と同じ墓に入る所まで妄想済み
【唐突に雨梨と秀嗣さん】
雨梨「今日ね、聖とモコモコ? とかいうハワイ? のご飯を食べたの」
秀嗣「うん、ロコモコだね」
雨梨「それで思ったの。私、ハワイでは暮らせないって」
秀嗣「そうか。よし、じゃあ俺たちの老後の生活はハワイ以外にしておこう」
聖「蓮見爆発しろ」

膝枕狂想曲
 彼が楽しみにしていたプリンが食べられてしまっていた。気が付けば何故だか私が犯人ということになっている。彼は怒っている。いや、怒っている筈なのだが。
「許して欲しければ膝枕をしなさい」
 濡れ衣な上に訳が分からないけれど、これで彼の怒りが収まるならと思った。(続)

膝枕をしても彼の恨み節は続いた。
「俺はプリンを楽しみにしてた」
「はい」
「でも冷蔵庫からは消えていた」
「はい」
「とても悲しかった」
「…はい」
「だからこうして膝枕で悲しみを和らげようと努力している」
「はぁ」
 たかがプリンで大袈裟な男だと思った

「悲しい時はお前に膝枕をして貰うと落ち着くんだ。プリンの事は許してやるから、だからお前はずっと俺に膝枕をしていろ」
 濡れ衣なんだけどな、とか。長時間の膝枕が辛いとか。言いたいことは山程あるけど、今は彼が満足そうにしているので黙っている事にした。
(終)