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カエルのヤナコッタVS都市伝説同好会!の巻

 カエルのヤナコッタVS都市伝説同好会の巻

《登場人物》

カエルのヤナコッタ…今井優氏のオリジナルキャラクター。変幻自在で常識が通用しないカエル。英雄なんてヤナコッタ!

綾小路 充…快楽至上主義者で女装の麗人。

播磨 羊…邪道なことや非常識なことを平然とやってしまう超常現象愛好家。両親がフランス人と日本人のハーフ。

薬師丸 繪漣…都市伝説同好会、唯一の良心。羊の幼馴染で少々猟奇的な一面がある。

 

ガラッ!
教室の扉が勢いよく開いた。扉を開ける勢いが有り余った所為か音は凄まじかった。
爪にマニキュアを塗っていた綾小路と三島由紀夫の『仮面の告白』を読んでいた繪漣、其々に好きなことをしていた二人は扉に視線を向けた。
視線の先には此の都市伝説同好会という珍妙な同好会の部長である播磨 羊がいた。右手に虫かご、左手には虫取り網を持っている。おまけに仁王立ちである。
「羊ちゃん?」
「何よ、そんな所に突っ立って」
セーラー服にきゃろらいんちゃろんぷろっぷきゃりーぱみゅぱみゅ的な赤いボブカットのウィッグというオーソドックスなんだかサブカルチャーなんだかよく分からない姿の綾小路はキョトンとした顔を浮かべた。その姿を見て、誰もこの人物が男だとは分かるまい。対して、本を閉じた繪漣は冷ややかな目線を羊に向ける。彼女は羊の幼馴染で、彼が突拍子もないことをする時はよからぬトラブルが起きる前兆であることをよく理解しているのだ。
教室に入り、2人の座っている席に近づくなり羊は、
「これ、校舎裏で捕まえた」
そう言って羊は虫かごを机の上に置いた。綾小路と繪漣は中を覗き込む。虫かごの中には、つるんとした真ん丸のフォルムと鮮やかな緑が特徴的な何とも珍妙な姿をした生き物がいた。
それは豆であることを忘れているようだった。若しくは毬藻であることを忘れているようでもあった。もしかしたらそのどちらでもないのかもしれない。けれど、その生き物はひたすらに珍妙てあり、虫かごの中で実在していることだけは確かなのだ。
繪漣は思わず、
「空豆?」
と呟いた。
繪漣の一言が気に食わなかったのか、緑色の丸っこい生き物はすかさず、
豆ッテ言ッタ奴、オモテデロ!豆ッテ言ッタ奴、ケンスイ50回!*1
と騒ぎ出した。繪漣は顔を顰める。
「こいつ可愛くない」
「カエルだろ、どう見ても」
羊が訂正すると、その生き物は騒ぐのを止めた。
「あ、静かになった」
虫かごの中を覗き込みながら綾小路が言う。
繪漣は呆然としながら呟く。
「本当にカエルなんだ」
「どう見たってカエルだろ!お前、いい加減にしろよな!」
「いや、分からん」
羊と繪漣が問答を繰り返している最中でさえも綾小路はひたすらに虫かごの中を覗き込んでいた。そして、
「ちょっと、可愛いかも」
と思っていた。マジかよ。
「私の知っているカエルと随分違うんだけど」
「お前、自分の当たり前が世間一般の常識だと思ったら大間違いだぞ」
「それ、アンタにだけは言われたくない」
珍妙なカエルと思わしき生き物を一目で気にいってしまった綾小路は次にこう言った。
「ねぇ羊ちゃん。このカエル、ちょっとだけ触っちゃダメ?」
「はぃっ?!」
綾小路の発言に繪漣は顔を顰めた。
「先輩、本気なの?!」
「あたしはいつだって本気よ!」
「しょうがねぇな」
ちょっとだけだぞ、と言いながら羊はカエルを虫かごから取り出す。
虫かごから取り出した途端、カエルは再び暴れ出す。
「ホレ」
「ありがとう」
しかし、羊は臆することなく綾小路に手渡す。結構な力が入っていた様でカエルの頬と思わしき箇所が少し窪んで見える。
カエルを掌に乗せた途端、綾小路は目を見開き叫んだ。
「何このカエル! 今迄触ったことのない感触よ!!」
「先輩…?」
暫くの間、綾小路はカエルを相手に随分とはしゃいでいた。
「俺、長いこと友達やってるけど今迄の中で今の彼奴が一番テンション高いと思う」
羊と繪漣はこれまでに見たことのないハイテンションな綾小路の姿にドン引きしていた。
「ちょっと、繪漣も触ってみなさいよ!」
「いえ、私は遠慮します」
繪漣は羊の後ろに隠れた。彼女が幼馴染を壁にする時は本気で拒絶していることを示している。しかし今の綾小路は全く気にしない。
「羊ちゃん! これ頂戴‼︎」
「えっ?」
羊の後ろで繪漣は更にドン引きした。
「ヤダよ、こいつは実験体に使うんだから」
「ヤッ…? ヤッ、ヤナコッタ‼︎」
羊の穏やかじゃない一言に繪漣はカエルの鮮やかな緑が少し青になったように見えた。
「じゃあ売って!」
「えぇっ?」
綾小路は諦めない。羊は少し考える様な姿を見せた後、応えた。
「じゃあ…60万?」
「高額過ぎるだろっ!」
金額を提示した羊に繪漣のジャーマン・スープレックス・ホールドが炸裂した。良い子に限らず皆は真似しないように。
「イテテ、じゃあ…5000円?」
強烈なプロレス技を仕掛けられたにも拘わらず何故かそこまでのダメージがあったように見えないまま、羊は新たな金額を提示した。
「お買い上げ‼︎」
「毎度ありぃ」
「2人とも馬鹿じゃないの?!」
二人が現金の授受を行おうとしたその瞬間、繪漣の苛烈な四の字固めが羊に炸裂した。世の中には「親しき中にも礼儀あり」という言葉が存在する。再度注意するが、良い子に限らず皆は真似しないように。最悪殺人罪で刑務所に入ることになるぞ。
「イテテテテ、繪漣! ギブギブっ‼︎」
「私の周りには変態しかいないのかぁぁぁぁ!!」
 幼馴染にプロレス技をかける女子高生の姿にカエルの緑が益々青くなっていた。 
「どうしよっかなぁ、これ! まずは姉上に見せなきゃだけど、どうしよっかなぁ?!」
そう言いながら綾小路はカエルを触りまくり弄びまくりであった。見た目は可憐だが、力は男。おまけに羊同様に力のさじ加減をあまり分かっていないのでその弄び具合は尋常ではない。
このままでは更なる身の危険が待っている。そう察したカエルは綾小路の掌から慌てて逃れる。
「あっ!」
綾小路は慌てて捕まえようとするがカエルは素早く、中々捕まえられない。
カエルは教卓まで飛び跳ねた。すると。
「ヤッ」
「や?」
教卓に上ったカエルはプルプルと震えていた。
 「ヤッ、ヤナコッタァァァァァァァァァァァァァァァ‼︎
「…マジで?」
気が付くと、カエルは段々と肥大化して教室を埋めつくそうとしていた。その勢いは都市伝説同好会の3人を押し潰すかのようだった。
さて、彼らの運命は如何に?!
次回に続く‼︎
 
***
 
「みたいなこと、起きねぇかなぁ」
虫取り網を空に向かって振り回しながら羊は呟いた。
放課後、学校の校舎裏で彼は日課の未確認生物の探索を行っていた。しかし期待している様なことは何ひとつ起こらないので退屈してしまい、ありもしない空想に耽っていたのだ。荒唐無稽なそれは空想癖な彼らしいものだった。
はぁ。
思わずため息が零れる。
「退屈だ」
思わずため息が零れる。
「何か面白いこと、起きないかなぁ」
彼は憂鬱そうに空虚へボヤく。見上げた先の空は嘲笑うように茜色に煌めいていた。
「ヤナコッタ‼︎」
そして秋風が舞う音に混ざった奇妙な鳴き声に気づく人は誰もいない。
 
《終われ》
 
ヤナコッタの台詞の一部を以下のbotを引用させていただきました。
この小説をいらんかもしれませんが相方の今井 優さんに捧げます。

*1:カエルのヤナコッタbot (@yanakotta1215) | Twitter