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ロマンス

連日、読書欲がフツフツと沸いてきている椿でございます。

今回も読書感想文。
 
(※以外ネタバレが含まれます、ご注意ください。)

 

 

ロマンス (文春文庫)

ロマンス (文春文庫)

 あらすじ

ロシア人の血を引く白皙の子爵・麻倉清彬は、殺人容疑をかけられた親友・多岐川嘉人に呼び出され、上野のカフェーへ出向く。見知らぬ男の死体を前にして、何ら疚しさを覚えぬ二人だったが、悲劇はすでに幕を開けていた…。不穏な昭和の華族社会を舞台に、すべてを有するが故に孤立せざるを得ない青年の苦悩を描いた渾身作。(Amazonから引用)

 
  • 柳広司さんの作品は今回初めて読みました。社会派なイメージが強くて読みづらいかなとも思っていましたが、その前に読んでいた『マーチ博士と四人の息子』と比べると、なんだか読みやすかったです。
  • 舞台は昭和なのですが、政党政治に関して論じる場面など多々現代の社会のことを書いているのではないのかと思い、興味深かったです。そういった点ではイメージしていた通りだったと思います。
  • 残念だった点は主人公・清彬とヒロイン万里子の人物描写の良さに反して他の登場人物たちが残念だったことです。この話の要とも言える重要人物の嘉人が若干物足りなくて、彼が清彬や万里子に対してどういう想いを持っていたのか? そういった描写がもっと見たかったです。あと特高の黒崎という人物は描き方によっては、凄く魅力的な人物になっていたと思うのに、結局尻窄みしてしまった感じがして勿体無かったです。
  • あの時あぁだったら、あの時こうしていたら、あの人がこうしなかったら、そう言った「もしも」が積み重なって段々と主人公・清彬を殺していく様でした。清彬は華族という華々しい生活を送る一方で、異国の血を引くことで蔑まれ孤立した存在です。そんな清彬がこの話で一貫して貫いたのは幼馴染の妹・万里子への愛でした。最後の清彬の姿は小説『世界の中心で愛をさけぶ』の主人公・朔太郎の姿と重なりました。大事な存在を失って、それでも生きなくてはならない。誰といても、どんな風に生きても心だけ死んでいる感じがそう思わされました。  万里子への愛が何者にもなれない蝙蝠の様だと感じていた清彬にとっての唯一のアイデンティティだったのかもしれません。想いが純粋でなればなる程、アイデンティティが自分を殺していくのです。純粋だったからこそ、彼は万里子との偽りの愛の世界すら選べなかったんだと思います。清彬の想いは下手な恋愛小説より、ずっと純粋な愛で詰まっていました。だから読み終わった後に、止め処ない切なさに襲われるのだと思います。